5 五行五色
宇宙の活力となるものを「気」というが、この気は「陰」と「陽」の両気によって形成されているという。これが陰陽説である。一方、この地上にあるものは全て五行という「木火土金水」の五元素の働きの影響を受けているとする五行説がある。
この五行を色でとらえた五色を備えて、草木を一瓶に挿けるものと伝書に記されている。五色とは、三原色の赤・青・黄と黒・白の五つの色をいい、四方中央でもって五行の色である五色を現すものである。尚、この五色が互いに作用することで、万物にある様々な色が生まれたとされている。また逆説的に考えれば、自然の草木には自ずと五色が備わっているものであると考えることができる。すなわち、草木を挿けた姿の内に、その色彩的な本質である五色を感じ取ることが大切なのである。
五色とは「木・火・土・金・水」の五行の色をいう。東は「木」にして青色を、南は「火」にして赤色を、西は「金」にして白色を、北は「水」にして黒色を、中央は「土」にして黄色を現す。四方から中央に至って、この五色が生じるのである。
また未生挿花では、水をもって黒色を現すことがある。重陽の節句で五色を挿ける時には、体に白菊を、そして用に黄菊を、また留に赤菊を三才の格に挿け、菊の葉の青と、黒をあらわす水とでもって五色とするのである。
さらに、この五色の上の最上の色として紫がある。「太陽」「太陰」の和合する時、すなわち太陽と月の両気が相応する時、紫の雲がたなびくという。「太陽」である火の赤と、「太陰」である水の青が和合して、その結果として紫が生じるのである。時節としては、毎月十三・十四日あたりに月が東より出るとき、また毎月三・四日あたりに朝日が出て月が西に残るとき、このときに「太陽」「太陰」の両気が和合し紫の雲が現れる。この最上の色である紫は、禁色として安易に用いることを禁じている。挿花において、杜若のような紫の花を安易に一輪だけ挿けてはならない。この挿け方は最上の挿け方とされている。