11 三方正面
挿け花は、原則的には床の間に置くものであり、よって床の間に手をついて正面より拝見するものであった。また会席の花として座敷に並べるときでも、床の間と同様に正面から拝見するものである。
しかし、三方よりよく見える場所に挿けるときのために、正面からだけではなく、左右少し斜めの位置からでも美しい三方正面の花の挿け方がある。
この挿け方としては、正面より向こう側の背後に花葉を多く使う。つまり正面からは見えにくい「見え隠れ」の花葉を多く使って挿けるのである。このとき、奥深い余情のこころでもって挿けることが大切である。左右より見たときにはよく見えるような後方の枝をうまく生かして、三方より見て枝の見切りなどの禁忌がないように、法格に従って姿を整えて挿けるものである。
また留め流しに挿けて、その向こうへ控えて使った枝が左右より見たときには、留流しであるのに留に見えるなど、後方の「見え隠れ」の枝をうまく生かして挿けたりとする。