6  七曲によらない変化挿け
 未生流の花形の基本となる三角形の鱗形の応用形としては、「七曲」「華やかな用流し」「遠山」「書院」「生け登し」がある。ここでは七曲によらない変化挿けとして、「華やかな用流し」「遠山」「書院」「生け登し」の花形について述べる。
 「華やかな用流し」は、七曲のなかの「用流し」と同じように、用の枝が長く前方に曲をもって流れていくものである。しかし、その姿は七曲のものよりも特に華やかで「家元好みの用流し」ともいう。体・留・相生・控は常の位置に定め、特に華やかな姿に挿ける。仮用を常の用の位置に挿け、これに前後の添をつけて肉づけする。用流しの枝は、体の寸法とおよそ同寸とし、体の下より三分の一程度の位置より体から分かれ、そして一度上に少し上がってより大きく流れるように挿ける。その枝先は立ち上がるように受けるようにし、軽い枝を仮用との間に適宜添えていくものである。
 「遠山」は、遠方の山々が連なる景色を見てとるような心持ちで挿けるものである。七曲の「用流し」よりも低い位置で用をため、流し枝は花器の下方の位置まで流れて、その先は立ち上がるようにする。そして仮用を入れて、また用の添を多く入れて十分に肉付きをしていく。体の長さは常よりも一段と低くし、草の姿として大きくため、その枝先は水際を離れて主位の場合は花器の左縁の位置にくるようにする。また相生は、留・控・体に合わせて十分にためるものである。
 「書院」は、三体九姿の「草の草」を基本として、体・用・留ともに充分に大きくためて挿けたものである。全体に華やかな感じの形であり、花材を十分に使って、華やかさとボリュームを出して挿けるものである。大きく草の姿にためて挿けた、体と用と留の三つの役枝を結ぶと三角形に見えるように、特に派手な姿に挿ける。用は前後に添を十分に入れ、控・留は特に奥行きをつけ、また用・留・控の枝ともに常よりも長めにして曲線をゆったりとつける。そしてまた相生は、全体が草の形なので、それにあわせて大きくためて体に添わせて挿ける。体後添・用前添・用後添・留と控の間の添と、全体に添の枝を充分に入れ、それぞれのつながりをもたせるようにするものである。
 最後に、「生け登し」は体の枝が常の位置よりも上方に伸び上がった形をいう。常の場合の寸法の取り方として、花器の下から体の先端までを三つ割りにして、下から一分を花器に、そして残り二分を花の寸法とする。これを体割りの法という。たとえば人体(頭を考慮にいれず)においては、膝で折れ、腰で折れて三段となる。膝より下までを花器の寸法とし、残り二分を花の寸法とするのである。このとき、実際には器の高さの二倍半と、少し高くして挿けるが、この少し高くするところは「半空」であると捉えることができる。そして、この「半空」が特に上方へと立ち上がった姿が、「生け登し」である。現在では、花器の半分程度を「半空」としているが、この「半空」は人それぞれ個人によって捉え方が変わるものである。人で例えるところの頭、つまり内に秘めるものが高らかに伸び上がった姿が「生け登し」であるといえる。