1  紅葉真俊の景色 挿け方
 真俊(しんしゅん)は真に優れた様を意味するものであり、この紅葉真俊の挿け方は、最も美しい紅葉の景色を挿け花として移し取ったものである。真紅に燃え盛る紅葉と、未だ充分には紅葉していない薄紅葉(もしくは青葉)を対称的にうまく扱い、生々流転し変化し続ける自然の原理を、こころの内に感じ取って挿けるものである。花器は台付きの広口を用いて、陰陽二石もしくは天地人三才の石飾りをする。
 先ず、天石の後には大株を挿ける。古木を用いて古木扱いをし、これに添える枝として、真俊の紅葉を使って挿ける。この真俊の紅葉は、花形という法格にこだわり過ぎることなく、自然の風雅ある姿を表現し、あまり手を加えず実の姿として挿ける。
 また一方、地石の後には小さい株にして、薄紅葉(もしくは青葉)のものを使って挿ける。このときの真俊の紅葉は、虚として法格を守り、横姿に挿ける。法格を守って挿けた花形は、すなわち人工的な虚のものである。自然という実の草花に、花形としての虚を加える。これを虚実等分という
 無形無限を現す天円は万物の本質(体)であり、有形有限を現す地方は万物の現象(用)を成すところである。大きい主株の立姿は「実」であり「体」である。一方で小株の横姿は「虚」であり「用」である。二にして一、また一にして二の関係を持つ、体用相応した体と用は不二一体のものであるといえる。この真俊の挿け方は、無限の本質と有限の現象を現す「体用の挿け方」である。
 なお、この景色は散る景色を現すものではないので落葉を使うことはない。