10 猫柳 玉取り 水潜り 挿け方
 取り合わせや配合が良く、美しく調和する様を例えるものとして、「梅に鶯」「竹に虎」「竹に雀」「牡丹に唐獅子」「紅葉に鹿」という言葉があるが、猫といえばすぐに猫が玉を取る姿を思い浮かべる。
 先ず、「猫柳玉取り」の挿け方として以下に述べる。猫柳の穂の銀毛は、猫の姿を思い出させる。この猫柳に玉を取って挿けるわけだが、この玉は体の後に体添の枝でもって玉の姿を備えるのが一般的である。しかしまた、用の下や留の下に取っても構わないともされている。
 勢いよく伸びる出生をもつ猫柳は、伸びすぎた枝先が何かのはずみで下に垂れて、玉の姿が出来ることがある。この風情を移しとった挿け方である。この玉は大きすぎても、小さすぎても調和はなく、花の姿全体から見て玉の大きさを定めるものである。また柳の線の美しさを引き出すことに重点をおき、その応合いの花として添えるとすれば、葉物か草花に限られる。 
 次に、「猫柳水潜り」の挿け方として以下に述べる。川などの水辺に生じる猫柳の枝が長く伸びたり、また倒れたりして水中に潜って水に流される。そして、その枝先が再び水面に伸び上がる様を移しとった挿け方を「猫柳水潜り」という。
 このとき花器は広口を用いて、水を現す黒い砂利と、陸を現す白い砂利を使って水陸を分ける。縦に川をとれば急流、また横にとれば緩やかな川の流れを表現できる。この陸を現す白石のところに、猫柳を用流しや留流しにして挿ける。そして、この流しの枝が水中を潜って、再びその枝先が水上に立ち上がってくる姿を表現するものである。このとき柳の枝を自然に水に潜らせ、またその立ち上がった枝先にも、自然の美を備えることが大切である。さらに水中のところへ、冬咲きの杜若などを応合ったり、また猫柳の根元に陸草や草物を応合って挿けたりとする。