11 南性北性の梅 挿け方
 梅の挿け方として、「珍花」「正花」「残花」と三通りある。この早咲きの珍しい梅である「珍花」、そして旬の「正花」、また晩春に残った梅である「残花」の三つを総称して「三世の花」という。「珍花」である南性の梅と、「残花」である北性の梅を二瓶対に並べたり、又さらに中央に「正花」を置いて三瓶とする。これは始・中・終という万物自然の流れを感じ取って扱ったものである。また、それぞれ一瓶のみを挿けて置いても構わない。
 客位に挿けたものを「南性の梅」といい、主位に挿けたものを「北性の梅」という。客位は、左旋する花全体が陽であるが、その中心となる体は右旋して陰となる。よって客位は陽(陽中陰)であるといえる。いっぽう主位は、右旋する花全体が陰であるが、その中心となる体は左旋して陽となる。よって主位は陰(陰中陽)であるといえる。この陽(陽中陰)である客位には、陽性である「南性の梅」を挿ける。春の陽気を受けて南の方の枝から咲き始めた梅の花、この珍花の風情を南性の梅で表現する。いっぽう陰(陰中陽)である主位には、陰性である「北性の梅」を挿ける。「南枝に始まって北枝に終る」というように、北枝の残花に惜春の情を、この北性の梅でもって表現するのである。
 南性の梅・北性の梅ともに一本の枝で体用を備えて、体には半開の花を、そして用には満開の花を使って挿ける。また留は別の枝を用いて、花も莟のものを使って挿ける。
 この南性の梅・北性の相違点としては、南性の梅には、早春の花として、春一番の陽気を受けた風情を現し、よって咲き始めの満開の花を用に使って挿ける。また一方で、北性の梅には、晩春の花として、残花の風情を現し、よってその年の春の最後に残った風情ある花を用に使って挿けるのである。この南性の梅は早咲きの珍花を、そして北性の梅は残花を、その枝ぶりや花の状態で趣きよく表現することが大切である。
 また体の後など程よい所に若枝(ズアイ)を使い、女画を取って挿ける。女画とは、交差した梅の出生を表現するものである。花器は薄端などの置花器を使うものとする。