13 根遣い三種 挿け方
 「根遣い」の挿け方は、縁起のよい吉事が永久に続くことを願ったものである。本来、挿け花は草木の花・葉・枝のみを用いて挿けるものであるが、この「根遣い」の挿け方においては、根も使って挿けるのである。草花の源である根を切らずに挿け花として用いることで、永久に流転する吉なるものを現したものである。この「根遣い」する花として、福寿草・富貴草(ふっきそう)・水仙の三種がある。福と寿という目出度い名をもつ福寿草、富み栄え貴い富貴草、そして清純なるものを現す水仙の三種を吉なるものとする。
 先ず、福寿草は花丈が短いために、浅い薄広口を使って石飾りをして挿ける。天地人の三石、また陰陽の二石、さらに五石、七石と石を飾り、天一地六の割合で小石を配する。石が主位であれば、福寿草の花は客位とする。一種で挿けたり、また、白梅の応合いとして添えて使ったりする。何れにしても白い根を見せて使い「根遣い」の挿け方をする。
 また吉事草の別名をもつ富貴草は、地下茎が横走して山地に群生する常緑の多年草である。この富貴草も、決して根を切ることなく挿けるものである。ちなみに富貴草(ふうきぐさ)と言えば、牡丹の異称となる。
 そして、厳しい寒さの中に花を生じ、草花の仙とも言われる清純なる水仙も、この「根遣い」の挿け方をするときがある。水仙が最も盛んとなるのは、一陽来復の冬至の頃であるが、漸次芽生えてきた陽気に連れられて、春になれば白根が盛り上がり、花も高く成長する。この花を葉よりも高く使う「春陽」の挿け方をする頃に、白い球根を使って「根遣い」の挿け方をするのである。浅い薄広口などの据物に石飾りをして、真の花留として砂利留めにして挿ける。また、白梅の応合いに添えて使うこともある。