15 芦一式 挿け方
 芦の由来するところを述べたい。この日本というものが未だ開かれていない青海原の草原であったときに、始めて芦が芽生えて、次第に蔓こって遂には大成島に広がり、この日本という国が出来たとされている。つまり芦の広がりが玉垣(日本国)の始まりであると捉えることができる。よって、この森羅万象の主ともいえる芦をみだりに取り扱うことを未生流では禁じている。
 この芦の挿け方として、花器は広口を用いて三才の石飾りをする。先ず、天石の後ろへ芦を三本か五本挿ける。この姿は空にして、また出生を重んじて自然の姿を「実」として挿ける。つまり自然のあるべき姿を純粋に捉えて、不変なる自然の姿を無相・空相でもって挿けるものである。すなわち、これは「体」であるといえる。
 次に、人石より二本か三本の芦を法格を守って、「虚」の姿として横姿に挿ける。天石に挿ける体の姿に対して、この地石に挿ける姿は「用」であるといえる。この「体」と「用」でもって虚実等分とし、「体用の挿け方」とするものである。
 そしてまた、地石のきわには、白い芽出しの若芽を、法格を守って虚の姿で三本挿ける。これを「飛根」といい、白い芽出しの若芽を使うことで、青海原に始めて芦が生じた景色を移しとるものである。黙して心眼でもって、万物の無きところに始めて一物が生じた姿をここに感じ取るのである。この芦の芽出しは「無一物」として「未生以前」を現すものである。万物が生じる前、またこの天地が生じる前には、形のない一物のものがあった。この一物は未生以前という根源的な太極であるといえる。
 この芦を挿ける時は、床の中央に置いて挿けるものである。このとき掛け物は外しておくが、大きい床であれば二幅対の掛け物を用いても構わない。なお、同じ間に他の花を挿けてはならない。書院には、釣香炉に香を焚いてもよいとされている。