17 藺物 挿け方
 藺はイグサ科の多年草で湿地に自生し、茎の先端に小さな花穂をつける。細藺(ほそい)・三角藺・琉球藺・富久藺・太藺などの藺物は、細い茎を何本か集めて一段とし、そして五段・七段・九段と段取挿けに準じて挿けるものである。
 段取挿けの五段は、体・体添・用・用添・留、もしくは体・用・留と大小の切株二段の合わせて五段として挿ける。また、段取挿けの七段は、体・体添・用・用添・留に、大小の切株二段を加えて挿ける。そしてまた、段取挿けの九段は、七段に相生と控を加えて挿けるものである。
 「富久藺の出生は根元株になりて蒲の如く、末は藺の如くなり。しかし少し平みあり」と伝書にあるが、特に富久藺は四季を通じて生じるもので、その時の時候の草花を添えて挿ける。また細藺・三角藺・琉球藺・富久藺などの藺物に添える、応合いの草花としては、杜若・水葵・沢瀉・猿猴草・河骨などを挙げることができる。
 太藺は縦縞があって、また横班があり上品なものである。この応合いに添えるものとしては、蓮・河骨などの水草の類がよい。また、三種・五種と数多く取り合わせて挿けてもよい。水陸分けにして、陸草を応合って挿けることもある。
 藺物を挿けるときの花器としては、据物、また置舟、釣瓶、薄端などの口の広いものを用いる。このとき、藺物の体後添に、一本から数本折れたものを使って「腰折れ」とするのも風情がある。また杜若を用に使い、体に藺物を、そして留に河骨を使う挿け方などもおもしろい。このように、藺物は趣向を凝らして種々に取り合わせて挿けるものである。