20 芒三種 挿け方
 芒に三種の挿け方の伝がある。花が白色で、穂の丈が一尺位と長く成長し、花の開いたシロススキを真麻穂(ますほ)の芒という。そして花が赤色で、穂の丈が一尺位のムラサキススキを真蘇穂(まそほ)という。また花が白色で穂の丈が五寸くらいの、未成長で花の開かない頃のシロススキを政穂(まさほ)という。この真麻穂・真蘇穂・政穂の三種の芒を使う挿け方である。
 体に真麻穂(ますほ)、用に真蘇穂(まそほ)、そして留に政穂(まさほ)の芒を挿け、体の後添の位置にシロススキを円状に曲げて真麻穂と政穂で「月の座」をとる。この月の座とは月の形を表現するものではなく、そこに月を迎える場所を設けるものである。よって、月見の花として月を迎える心持ちでもって、この月の座をとるのである。
 この芒三種は清く澄みわたった明月の時に挿ける花である。特に秋の季節、旧暦七・八・九月の中間にあたる八月の満月は、仲秋の名月として月見の好時節である。またこの月の座は月のない夜にはつけてはならない。
 挿け方として、体に三本・用に二本・留に二本・月の座に二本と、合計九本程度使って挿ける。また穂についた生来の葉は大きすぎて風情がないので、穂のある茎を葉のある茎から切り離して適宜に組み合わせて使う。長すぎる穂は穂先をつまんで先を指で引きちぎると穂が短くなり自然にみえて、垂れ下がった穂も立ち上がる。葉は葉先のたれ下がったものは、その葉先を斜に鋏でそぎ上げる。芒の葉は二方向に出るので、方向が悪い時には、葉のさやの部分を指先で回して、葉先を思う方向に回すことができる。これを回し葉という。
 月の座は葉でとる方法と、また穂でとる方法とがある。葉は自然に変曲して月の姿になっており簡単に月の座をとることが出来るが、いっぽう穂は曲げようと思ってもなかなか思うようにはいかない。先ず葉でとる方法として、体の後添あたりに軸付の葉があればよいが、なければ他の軸付の葉をひとつ体の後に添え、大きくひらりと後に下げて使う。次に、体の後の控えの位置に、真麻穂・政穂を大小各一本づつを添えて、この穂と上の葉とでもって月の座をこしらえる。
 穂でとる方法としては、体の後添あたりに真麻穂を挿け、その長い穂をひらりと後に下げる。そして次に控の位置に短い穂である政穂を挿け、これを上に立ち上げて使う。穂を自由に曲げるために前日より、のりなどで穂をかためておくと曲をうまく作ることができる。
 花の水揚げとしては、酢につけた後に火で焼く、また酢につけた後に深水に入れるなどの方法がある。この芒三種を挿ける時には、寸渡や薄端などの置物を見合わせて用い、必ず花台に載せて挿けるものである。