31 藤 河骨 杜若 三種 挿け方
 山の渓谷や池の辺などに、風情よく花房を垂らして咲く陸物である藤の花に、杜若と河骨の水草を対照的に取り合わせた景色挿けである。花見といえば、今は桜見が恒常的なものとなっているが、古では桜に加えて、藤見も人々に好まれて行われていた。垂れ下がる藤の花影が、水面や地面に映る姿を愛でる趣向を影藤というが、この影藤の風情で、水辺に咲き誇る藤の花が水面に映る姿を愛で、そして又その水面に杜若・河骨などの水草が凛とした姿で咲く景色を広口に移しとるものである。
 広口に黒白の砂利で水陸を分け、そして三才の石飾りをする。天石は陸を現す白砂のところへ据え、また人石と地石は水を現す黒砂のところへ据える。
 先ず、天石の後ろには藤を挿ける。三才の石飾りを主位にしたときは、天石に挿ける藤の花は客位とする。枝が垂れ下がる出生をもつ藤であるが、花房が垂れ下がったものをあまり多く使い過ぎると詠めがよくない。よって、蔓などの風情がある枝や、また立ち上がった幹のものをうまく使いながら、莟と若葉などを取り合わせて挿ける。
 そして、人石には杜若を七葉二花で横姿に挿ける。また、地石には河骨を開・半開・角葉を用いて、三葉一花や五葉一花で挿ける。「角葉」とは、角のように巻いた葉であり、「巻葉」ともいう。この河骨の花を用いる箇所は特に決まっていないが、葉よりは低くして、そして姿よく出生に応じて挿けるものである。また大広口であれば、杜若、河骨を株分けにして挿けたりしても構わない。