32 河骨 挿け方
 河骨の出生として、河骨は始めに二枚の葉が向かいあって開き、そして新たに二枚の葉が向かい合って開いて四方に拡がる。そしてまたその中心から、追々と花葉が生じていくため、一株に何枚の葉と定まることはない。春の彼岸頃より秋の彼岸頃まで、次々と葉が生じて成長していくものである。
 この河骨の挿け方としては、花器は広口を用いて、体と用と留に開葉を使い、体の添えとして半開の葉を、また留の後添えとして「角葉」を使って挿ける。この「角葉」とは角のように巻いた葉であり、「巻葉」ともいう。花を挿けるところは定まってはいないが、葉よりは低くして、姿よく出生に応じて挿けるものである。
 また、葉が大きく存在感のある河骨を挿けるときは、五葉二花・七葉二花・九葉三葉と、花の本数を多めに使ってもよい。魚道を分けて立姿と横姿と二株を挿けたり、また花器の大きさに応じて五株・七株と挿けることもある。
 この河骨には雨中の景色の挿け方がある。河骨雨中の景色として、先ず体と用の葉に開葉を使い、そして体の添えとして半開の葉を、また用の添えとして小さい開葉を水面より五分ほど上がったところに使って挿ける。この用の添えとして挿ける小さい開葉は、水面をたたく風情を現した葉であり、よって「水たたきの葉」という。また、花は体と用の間に一輪、そして体と留の間に一輪使う。留には「角葉」を大小と三枚使って挿ける。以上で七葉二花となるが、さらに三花九葉と枚数を増やして挿けても構わない。
 次に魚道を分けて、小さい葉の開葉、半開、角葉を三葉使って、これに満開の花を一輪添えて水中に挿ける。また、曲のある角葉に莟を添えて水中に挿ける。以上で三株となるが、株を増やして五株にして挿けても構わない。水に浮かして使った葉は「陽中陰」、いっぽう沈んだ莟は「陰中陽」である。この浮き沈みのある花・葉を愛でて、雨中の景色とするものである。