7 遠山霞花の景色 挿け方
微細な水滴が空中に浮遊して空がぼんやりして、遠方がはっきりと見えなくなる春の現象のことを霞(かすみ)という。またそのような秋の現象のことを霧という。この霞は、穏やかな春の日の明け方や夕方ごろによく生じる。
この遠山霞は、霞が遠方の山々に帯状にかかって、雲のように見える景色を移しとったものであり、よって春に挿けるものである。二重切もしくは三重切の花器を使い、上口には草花を挿け、下口には木物を上口の花よりも高く挿ける。
先ず、上口に挿ける草花は、山の上に咲く草花を山の下より見上げたものとして、遠くかすんだ景色を現すように、花や葉が明白に分かりにくい「霞花」の風情で挿けるものである。小菊などを上口に挿ける時は、この「霞花」の風情で、小さく切り葉にした葉を主体にして、莟・半開のものがちらちらと見え隠れするように挿ける。とにかく、この上口に挿ける草花は、葉が小さく、そして数もしっかりしていないような花材がふさわしい。
次に、下口に挿ける木物は、上口に挿けた草花より高く使い、霞がかかる遠山の景色を移し取って挿ける。下口に挿ける木物の留のほうは近景を、また体のほうは遠景を表現するもので、この体の懐あたりにかけて霞がたなびく風情が感じとれるようにして挿けるものである。