1d 七夕の花
 七月七日は「五節句」の一つである「七夕」である。天の川の両岸にある牽牛星と織女星が年に一度出会うという七月七日の夜、この二星を祭る行事で、古来中国から乞巧奠として伝わり、江戸時代には五節句のひとつとされ民間にも広がったものである。庭前に供え物をし、葉竹を立てて願い事などを書いた五色の短冊を付け、また歌や字を書いて飾りつけ、書道や裁縫など芸事の上達を祈った。もともと七夕は、お盆の前に己の汚れを祓い清める行事のことをいった。水に汚れを流すという行いは日本独特の風習であるといえ、むしろ七夕の日には雨が降ったほうがよいとする地方まである。現在の七夕は、お盆の前に行う行事というよりも、星祭りの色合いのほうが濃くなり、お盆に行う先祖祭りと七夕の祭りと、それぞれ別に行われるようになった。
 この七夕の花としては、体に苅萱(若しくは桔梗)、用に桔梗(若しくは苅萱)、そして留に女郎花を挿ける。桔梗は女性的な花で、いっぽう苅萱は男性的な花とされている。主体となる体に男性的な苅萱と女性的な桔梗のどちらを使うかは、挿ける者の感覚で決めて構わない。素朴な苅萱を牽牛に、そして色鮮やかな桔梗を織女に見立て、地上にてこの二つの星を仰ぐものとして女郎花を、風情良く合わせて三種の花を挿けるのである。体・用・留と一瓶に挿ける時に、桔梗と苅萱が互いに花を見切っても、風雅を感じるものであれば構わない。苅萱の中に桔梗がちらちらと有る如くに挿ける。
 また広口に挿けるときは、株分けにして風雅に挿ける。水陸を分けて、五〜七種類と秋の七草(萩・薄・桔梗・撫子・葛・藤袴・女郎花)等の秋の花材を取り合わせ、初秋の風情を移しとって挿けてもよい。大広口であれば、飾り石で天の川を見立てて、九〜十一種と挿けることもある。