2a 正月二日の花
 元旦には若松を、正月二日には伐竹を、そして正月三日には梅を挿ける。この松と竹と梅の三つは、厳しい寒さに堪えることから「歳寒の三友」と呼ばれ、目出度いものとして古くより慶事の際に用いられてきた。この松竹梅を、正月の三ヶ日に注連の伝として挿けるのである。
 注連とは注連縄のことを指し、この縄でもって境界を示し清浄・神聖な場所を区切り、神前に不浄なものの侵入を禁ずるようにした縄のことである。三筋・五筋・七筋と、順次に藁の茎を左旋にして捻り垂らし、その間々に紙垂(かみしで)を下げて、新年のときなどに門戸や神棚に張るのである。神代の時代、天照大神が天の岩戸からお出になった後、再び中に入られないように岩戸に縄を張った。この縄が「尻久米縄」で、注連縄の始まりとされている。正月に、門松とともに戸口に注連飾りを置くのも、家の中に悪霊を入れず、穢れを払い、そして無病息災・家内安全などを祈念してのことである。
 正月二日の花としては、この注連の伝の伐竹を挿ける。細い若竹を用いて、伐竹を長いものと短いものと二本挿けるのである。長い陽の竹には三節二枝を備えて体と用の枝をとり、竹の先を大斜に伐る。一方、短い陰の竹には二節一枝を備えて留の枝をとり、竹の先を平に伐る。このとき、竹の大斜の切り口が、平の切り口と向き合うように調和して挿ける。
 ただし竹の節間が短いとき、陽の竹は三節二枝にこだわらず、陽数(奇数)の節と陰数(偶数)の枝とし、また陰の竹は二節一枝にこだわらず、陰数(偶数)の節・陽数(奇数)の枝としてもよい。陽の節に陰の枝をもつ長い竹は「陽中陰」、いっぽう陰の節に陽の枝をもつ短い竹は「陰中陽」である。陽の中に陰を宿し、そしてまた陰の中に陽を宿す。この姿に、内に宿る「腹籠」の存在をみてとることができる。
 竹の葉には、「魚尾」「金魚尾」「飛雁」の三通りのものがある。体にはこの三通りの葉が平均して付いたものを選び、また用には「金魚尾」の葉が多く、そして留には「魚尾」の葉を多く備えるものを選んで挿ける。このように竹の葉の形態を変化させることで、自然にある陽気の移り変わりを示すのである。
 最後に、金銀の水引七本を相生結びにして、用の下に金の水引がくるように結ぶ。以上、体・用・留の三つの枝、天地人三才の三、五つの竹の節の五、そして水引の七をもって、以上で注連(七五三)の伝とするものである。