2b 正月三日の花
 正月三日には、注連(七五三)の伝の梅を挿ける。このとき、枝は古木を二本と、そして若枝を三本と、合わせて五本使って挿ける。この花形は三才格とし、最後に水引七本を相生結びにして、以上でもって注連(七五三)の伝とするものである。
 古木は親の姿を、また若枝は子の姿を意味し、親二人に子が三人生まれていくという子孫繁栄の姿を現すものである。古木の二本は偶数(陰数)で陰を、そして若枝の三本は奇数(陽数)であり陽を意味する。この合わせて五本使う梅は、陰の中より陽が芽生えていく「陰中陽」の状態であるといえる。梅の姿は一本の古木で体と用の格を備えるのがよく、留は別のもう一本の古木を使う。そして若枝の三本を、この二本の古木より生じたように見せて挿ける。
 梅はその生態から交叉する枝を多くもつ、そのために体の後あたりに「女格」を一ヶ所とる。この「女格」をとるとは、女という字の姿になるように枝を交差させて挿けることをいう。ただ必ず用いなければならないというものではない。梅の出生からどうしても交叉する枝があるので、これを出生のものとしてそのままにして挿けるという考え方のものである。これは、自然という体と、花術である用が相応した姿、つまり体用相応した姿であるといえる。
 また他の植物に見られないほど成長の早い、ヅアイを程よいところへ高く使って挿ける。花は、体・用・留それぞれに、開・半開・莟のものがあるように、また片寄ることのないように取り合わせる。この梅中期の正月のときの梅を「孟春の梅」といい、「南性の梅」の珍花、そして「北性の梅」の残花と合わせて「三世の梅」という。「南性の梅」と「北性の梅」は、用に開のもの・体に半開のもの・留に莟を使って、自然の陽気の移り変わりを示す。それに対して、正月の時に挿ける「孟春の梅」は、開・半開・莟と、花全体に片寄ることなく混ぜ合わせて使って挿けるものである。また「北性の梅」のときは珍花であるので、ズアイは短く低くし、留・控あたりに使う。いっぽう「南性の梅」は残花であるので、ズアイは特に長く高くし、相生から体添あたりに使って挿ける。この七五三の伝のときの「孟春の梅」は、ズアイは高くあるものの、中庸に使って挿けるものである。