2d 上元の花
 正月十五日は、三元(上元・中元・下元)の中のひとつ「上元」である。「陰陽五行説」に対して「三元論」というものがある。この「三元論」は物事を三つに分けて考えるもので、一年を上元(旧暦正月十五日)、中元(旧暦七月十五日)、下元(旧暦十月十五日)と三つの変わり目に分けて考えた。また、これは太陰暦で考えた日付であるので「十五日」は十五夜、つまり上元・中元・下元は、それぞれ満月の日であった。この満月である三元の日には夜祭りが行われ、そして終夜にかけて灯籠に日を灯して神を祭ったといわれている。そして「上元の日」には、小豆粥を食して一年の厄を除いた。
 この「上元の花」としては、「梅」「柳」「椿」の三種類を挿ける。三元の冠花といわれ新春にちなむ芽出度いものとされている「梅」、また垂れ物であるがその勢い強く、成長が早く芽出度いものとされている「柳」、そして八千年の寿があるとされる「椿」、この「梅」「柳」「椿」を使って挿けるのである。
 花器は広口を使って三才の石飾りをして、天石の後より小垂れた柳を挿ける。そして人石の後より椿を横姿に、また地石の後より古木の梅を横姿にして挿ける。梅は五・七輪の開花のものを使い、朽ちた幹より梅の若枝が生じてくるようにして挿ける。この梅は「陰中陽」と捉えることができる。
 主位の石には客位の花を、そして客位の石には主位の花を挿ける。旧暦の十一月は子の月、旧暦十二月は丑の月、そしてこの旧暦一月は寅の月である。子の月は一陽来復、つまり陰の中に陽がようやく生じるときで、丑の月は、この生じた陽が長じるときである。そして、この寅の月は陽の定まる月であり、この時候を挿け花として床へ移すのである。つまりこの「上元の花」は、「陰中陽」の陽がしっかりとした確かなものとなってくることを現し、「陰」の中にも強い「陽」の気を感じ取れるように花を挿けるのである。