2e 節分の花
季節の移り変る時の分かれ目、すなわち立春(新暦二月四日頃)・立夏(新暦五月六日頃)・立秋(新暦八月八日頃)・立冬(新暦十一月八日頃)の前日を節分という。そして特に立春の前日(旧暦一月十三日頃/新暦二月三日頃)を、代表して節分という。これは立春が一年のうちで始めに訪れる節分であり、この日に内外の邪鬼を払う様々な行事が行われてきたためといわれている。この立春より暦の上では春となる。
立春の節分のときには、鰯(いわし)の頭を刺した柊の枝を戸口の前に立てて、「鬼は外、福は内」と称しながら、大豆をまいて邪鬼を払った。鬼が鰯の悪臭を受けて、柊のとげに刺されて逃げていくようにしたものである。また神社では節分祭として「追儺(ついな)」や「鬼遣(おにやらい)」の行事が行なわれた。「追儺」とは、鬼を払い疫病を除く儀式のことで、鬼に扮装した者を内裏の四門をめぐって追いまわし、邪気を払うといわれる桃の木で作った矢でもって鬼を射る行事である。
この「節分の花」としては、神の木と書く榊(さかき)を挿け、これに目出度い名をもつ福寿草を添えて挿ける。福寿草は「根遣い三種」のひとつとして、生きていく上で大切な根を切ることなく、縁起のよい吉事が永久に続くという願いをこめて白い根を見せて使う。本来、挿け花は草木の花・葉・枝のみを用いて挿けるものであるが、この「根遣い」の挿け方においては、根も使って挿ける。草花の源である根を切らずに、挿け花として用いることで、永久に流転する様を現したものである。この「根遣い」する花としては、この福寿草の他に富貴草、水仙と三種類のものがある。福と寿という目出度い名をもつ福寿草、富み栄え貴い富貴草、そして清純なるものを現す水仙の三種は吉なるものであるとされている。
また榊に、春の神に奉る花として、梅を添えて挿けたりとする。寒さをしのいで一年で最も早く咲く梅は三元(上元・中元・下元)の冠花、百花の魁として位の高い花とされている。この梅を榊に添えて、立春の前日にあたる「節分の花」として挿けるのである。