2h 乙朔旦の花
 「朔旦(ついたち)」は月の初めを祝うものである。そしてその年の最後の「朔旦」となる、十二月一日を「乙朔旦(おとついたち)」という。長男を太郎といい、年の初めの月である一月を「太郎月」という。また末の子を乙子といい、年末の月である十二月を「乙子月」という。十二月一日は「乙子月」の「朔旦」であるので「乙朔旦」とされた。
 この「乙朔旦」のときには、乙子の祝いとして、末の子の成長を祈って餅をついて食べた。これを乙子の餅という。また川浸餅(かわびたりもち)といって、水難除けを祈願して水神を祭り、餅をついてこれを水神に供えた。 
 「乙朔旦」の花としては、梅・椿などの花を挿ける。年の最後の朔旦である「乙朔旦」のときに、今年一年が無事に過ぎたことを感謝し、めでたく春陽を迎えるこころで、春めいた花を使って挿けるのである。
 月の初めを祝う朔旦の中でも、元旦(一月一日)・八朔(八月一日)・乙朔旦(十二月一日)を始・中・終の「三朔」として、このときには格別に神仏を祭るものとされている。また、元旦・氷室の節供(六月一日)・田の実の節句である八朔(八月一日)を「三朔」とすることもある。