2i 事始の花
十二月十三日は、古より天地が穏やかで憂いのない穏やかな日であり、このときより新年を迎える用意を始めるのである。このときを「事始」という。
その年の福徳をつかさどる神である歳徳神(としとくじん)を迎えるために、身心を清めて、すす払いや大掃除をして家を清める。この歳徳神のいる方角を「明の方」また「恵方」といい、万事にわたって吉であるされている。またこの日は、歳徳神をお迎えする神棚(恵方棚)を設え、歳徳神が降りてくるときの目印となる門松や松飾りに使う木を、「恵方」に当たる山へ取りに行く「松迎え」の日でもある。正月飾りは、二十九日に行うと「苦立て」とされ、また三十一日に行うと「一夜飾り」になるといって忌み、それまでに飾るものとされている。
この「事始」の花としては、梅にシダを応合って挿け、福徳をつかさどる歳徳神に奉る。シダは冬至の後に若芽を生じるものであり、正月にも用いる目出度いものである。この若葉が綺麗なシダを、三元の冠花といわれ新春にちなむ芽出度いものとされている梅に添えて挿けるものである。