2j 下元の花
 十二月十五日は、三元(上元・中元・下元)の中のひとつ「下元」である。この「下元」のときに、その年が無事に過ぎ行きたことを感謝してお祝いを行った。十五日は毎月祝うものであるが、上元(正月)・中元(七月)・下元(十二月)は始・中・終の三元として、格別大切に神・仏を祭り祝うものである。「上元」は人々に福を与え、「中元」は人々の罪を許し、そして「下元」は災厄を除くという三元思想に基づき、「上元」には天官(天神)を、「中元」には地官(慈悲神)を、そして「下元」には水官(水と火の神)を祭った。また、この「下元」は古では十月十五日のときをいった。
 この「下元」のころは、冬が深まって草木は枯れゆくものの、その中には春の陽の気を含んでいる。「事始」も済んだ後のことであり、新年の春を待つこころでもって、ゆずり葉を挿け、これに万年青や藪柑子などを応合って春の神に奉げる。
 ゆずり葉は、若い新しい葉が開いて育成した後に、古い葉が譲って落ちていく出生をもつ。このゆずり葉を主体に使って、旧年と次にくる新年の両年が、変わらず安泰であることを願って挿けるものである。