3c 元服 髪上の花
 「元服の祝い」とは、男子が十一歳から十七歳のころ、ようやく成人になったことを祝うもので、このとき男子は髪型や服装を大人のものに改めて、頭に冠をかぶる「加冠の儀式」を行なった。元服は人生の大事な節目であって、生まれた年と没した年に加え、この元服の年は必ず系図にも記されるものであった。また、この「元服の祝い」は正月に多く行われた。
 いっぽう女子は、成人して垂れ髪を束ねて結い上げる「髪上の祝い」を行なった。また鉄漿(かね)を初めてつけて歯を黒く染め、成人した女子や一人前になった芸妓を祝う「鉄漿付け(かねつけ)の祝い」などもある。この鉄漿(かね)とは御歯黒(おはぐろ)のことで、歯を黒く染めるものである。現在では、満二十歳に達したときに男女みな成人とし、一月第二月曜日が「成人の日」とされている。
 「元服の祝い」「髪上の祝い」と、成人を祝うときの花としては、八千年の齢を持つとされる白玉椿を一種だけ用いて挿ける。もしくは、清浄な白い花を挿けて成人を祝うものである。白い花は濁りのない清純無垢な姿を現すものであり、成人した男女がそのような姿であり続けることを祈って、白い花を一種のみ使って挿けるのである。