4c 追善 の花
 仏教は三世因果の道理を説くもので、人間の生命も過去・現在・未来とつながり、現世において人間は様々な行いをするものである。それにより生じる善悪の原因は、その人の因縁となり、この三世に通じて作用するといわれている。死後に善き果報を受けている霊に対しては益々善き道に進むように、また悪道に堕ちている亡者をその苦悩から逃れて安楽の道へ差し向けるように、残された身内の者が故人の冥福を祈り、そして故人の年忌などに仏事を営む事が追善供養である。
 まず死後、四十九日間の中陰の間は七日ごとに法事が行なわれる。死者が次の生を受けるまでは四十九日あるとされ、その期間を中陰というのである。そして一周忌以後、故人の死去の当月当日に法事が行なわれる。一回忌・三回忌・七回忌・十三回忌・十七回忌・二十五回忌・二十七回忌・三十三回忌・五十回忌・百回忌などがある。
 この追善のときの花は、体に枯れ木を故人に見立てて挿け、これに勢いの強い草木を遺族・一門として、体に添わせて挿けるものである。故人を見立てる主体となる体には、赤色の花を使ってはならない。このときの花としては、梅・柳・糸杉・黄梅・糸桜・えにしだ・れんぎょう・めどはぎ、また常盤物などを用いて挿けるものである。また、この応合いの花には赤色のものを使って挿けてもよい。
 そして、亡くなった故人の位牌、画、写真などを床に飾り、この追善の花は最も縁の深かった者が挿ける。また、香炉、盛り物、火燈を飾る。この諸飾りは真・行・草とあるが、公開の会のときは、大略の三具足飾りをする。この三具足飾りとは、押板もしくは平卓の上に、中央に香炉を、そして左右にそれぞれ(鶴亀)燭台一基と花瓶一基を飾るものである。