4d 陣中 和睦の花
「陣中の花」として、戦の中におかれている陣中において花を挿ける時は、兵士の心を和らぎ安んじるような、強き陽気な花を派手に挿けるものである。花首の落ちやすい椿や、また頭を下げて降伏に通じる垂物の類の花を挿けてはならない。戦には積極的な陽性の一面と、そして悠然と敵をかまえる陰性の両面が大切である。この陰陽のバランスを考えながら、やはり陽性を主にして挿ける。強き花としては、千年の齢をもつ松、他家を切るに通じる竹、また先陣として花の魁である梅などを挙げることができる。
次に「和睦の花」として、戦の和睦の折には、樒(しきみ)に時候の花を添えて挿ける。樒は毒性があり虫や獣が寄り付かないため、墓前や仏前に供える陰木である。この樒の持つ陰性は、血気盛んな兵士たちの気を抑えることにつながる。この陰木に対して、時候の花である陽の花を添えて、陰陽和合・和睦を現すのである。またこの時に添える花は白いものがよい。白色は色の総和であり、和睦に通じる色といえる。
この「陣中」「和睦」の花は、戦に限らずとも、現在の社会生活における戦事や和解のときにも通じるものであると言えよう。