4e 奉納 献花 供花の花
「神社仏閣奉納の花」として、先ず「神社に奉納」する時、また能舞台等の席に花を挿ける時は、島台飾りにする。島台飾りとは、屏風で丸い囲いをし、その周りに花を並べ、四方廻って見えるようにしたものである。神前の正面を上座とし、その反対側を役席第二座、そして神前より左(陽)を第三座、また神前より右を第四座とし、このように花を配して奉納するものである。
次に「仏閣に奉納」する花としては、水陸に分けて山水に挿ける。これは、浄土と現世の二元的な状態を示すものである。床には、釈迦像などの仏の掛け物を掛けて、里の物である食べ物を供える。床に陸物の花を挿けた時には、床脇より陸草を並べ、そしてそれより先には水草を挿けて景色よく飾る。掛花器は陸草の上に、舟は水草の上に釣る。このとき、掛花器と舟は草木の取り合わせに応じて用いるものである。
また「神社また霊祠へ献花の事」として、神社、また神の霊を祭る霊祠に献花するときは、神の木と書く榊(さかき)を挿ける。神前に供える献花に対して、仏前に供える花は供花という。このとき、花器は青竹を用いて、花台は木地の真のものを使う。挿ける花は、体に七つの枝、用に五つの枝、そして留に三つの枝を備えて、不浄なものを取り除く「七五三」として、三才の格を整えるものである。榊以外としては、若松を「七五三」でもって献じても構わない。
「涅槃像に献じる花」として、釈尊の入滅の様を現した像である涅槃像に献じる花としては、糸桜に縞芭蘭をあしらって挿けたり、また糸柳に白玉椿のあしらいでもって挿ける。このとき、有情非常に至るまで、自然に憂いの意をこめ、そしていと艶しく挿けるものである。
釈尊が菩提樹の下に瞑想して、解脱したときの境地を涅槃(ニルバーナ)という。「ニルバーナ」とは「吹き消した状態」を意味し、風が燃える火を吹き消す場合のように、燃えさかる煩悩の火を智慧によって吹き消し、苦悩のなくなった状態を現すものである。煩悩の炎の吹き消された悟りの世界である「涅槃」は、静やかな安らぎの寂静である。諸行無常、諸法無我の事実を自覚することが、いわゆる涅槃寂静のすがたであると言えよう。釈迦入滅の日は二月十五日とされている。