5c 花見様の心得
「床の花見様の心得」として、先ずは床に関することを述べるものとする。上段の間の床や二畳台附きの床は、貴い御方の座する所であるので、その床には貴人の像を祭り置いて花を供したり、神仏を祭るのが本来のものである。よって、神仏以外の人の書画などが掛けられるようになった、現在の床は厳密にいうと正式なものではない。床のない平座敷であっても、床の前の一畳は床と同じ高さと心得て、貴人の座するところと考える。よって、むやみに床の前に座することは避けるべきである。
床の花を見る時は、床前の畳を半分下って座し、膝の上に手を組み、先ずは掛け物を書画・名印・表具・軸の順に篤と見る。そして、それより後に花を拝見するものである。また花の水際を見るときは、亭主の許しを得てから、膝行して床前まで進んで拝見する。二畳台附きの床の場合は床縁の際より、また上段の間の床では下段の間より拝見する。
「会席の花見様の心得」として、花の会席においては、玄関に花があれば、先ずその花を篤と拝見する。座敷に入って床前まで進み床の花を拝見し、次に床脇、巻頭、巻軸の順に花を拝見する。その後に、中央の花を拝見して、中央より巻頭の方に至るまで、そしてまた中央より巻軸に至るまで花を拝見する。このときは、二三瓶を一目で拝見していってもよい。最後にまた床前に戻って、床の花を篤と拝見してから帰るものである。
床でなく一文字の席であれば、先ず中央の花を拝見する。そして左脇より順に末席まで拝見し、また中央に戻って花を拝見する。そして次は右脇より順に拝見していく。他流の花会席では、余計な言葉を慎み、特に礼儀・挨拶を正しく行なうものである。