11 月
 月花器には「上弦の月」「下弦の月」「満月」と三通りのものがある。「上弦の月」は、新月から満月に至る間、旧暦である太陰暦で捉えた月の上旬七日・八日頃に出る月をいう。そして、月の中旬十五日頃に「満月」の月となる。また、この満月より新月に至る間を「下弦の月」といい、この「下弦の月」は月の下旬二二、三日頃に出る。
 なお旧暦(太陰太陽暦)では月の満ち欠けの周期がおよそ二十九日半であり、これを一年に割り当てると三五四日となって十一日不足する。よって約三年に一度の割合で、一年を十三ヶ月とした。これが旧暦の閏年である。
 この月花器の用い方としては以下の通りである。明り口が向かって左にくる陰の床には、床を三分割して床柱の方から三分の一あたりの位置に「上弦の月」を釣る。そしてこの「上弦の月」には主位の花を挿ける。また、明り口が向かって右にくる陽の床には、床を三分割して床柱の方から三分の一あたりの位置に「下弦の月」を釣る。この「下弦の月」には客位の花を挿けるものである。「満月」は陰の床と陽の床のどちらに用いても構わない。ただし、花は陰の床には主位の花を、いっぽう陽の床には客位の花を挿けるものである。
 この月を釣る高さとしては、「上弦の月」「下弦の月」「満月」ともに、その時節の月の動きをしっかりと捉えて、高・低と変化させて釣るものとする。