12 卓
「卓」は万物の根源である一なる「太極」から、天地・陰陽という「両儀」へと開いた状態を現すものである。この「太極」から「両儀」へと変化したとき、「暖」の気は昇って天となり、いっぽう「寒」の気は降りて地となった。よって天には陽性である火を置き、地には陰性である水を置く。つまり、天板には火を用いる香炉を飾り、いっぽう地板には水がはいった花瓶を置いて花を挿けるのである。この卓の正式な真の卓は四つの柱をもつもので、この柱でもって東西南北の四方を現す。また二つの柱の卓も、略式でもって用いても構わない。
 この卓には、宇宙の間に始めて一物が生じた姿にして花を挿ける。理念である体を性といい、働きである用を情という。この性情という、根本的な成り立ちとその働きに想いを傾け、四方に障りがない様に、陰陽和合・虚実等分・天地自然の理を感じて花を挿けるものである。
 正式な卓である四柱卓で真の飾りをする時は、先ず芦を三才格に主株に挿け、そして芦の芽出しを株分にして挿ける。二本足の二柱卓で略飾りする時は、芦以外の草木を挿けてもよい。冬から春の頃にかけては、白玉椿の蕾・開の二輪と葉五枚を使って挿け、また夏から秋の頃にかけては、白か黄の菊を中輪の蕾・開の二輪と葉を五枚を使って挿ける。このとき陰陽和合した半開一輪に、葉を三・五葉と備えて挿けてもよい。この他、蘭・杜若・水仙など上品で尊い草木を、花一本に三葉の割合で使って、「三葉一花」のこころで挿けたりとする。
 一花一葉を挿けるときは、この卓を用いるものとされている。一花一葉は如々無心であって、死でもなく活でもなく、静でもなく動でもなく、すなわち空である。空は煩悩を取り去った無心となったときに、ようやく生じるものである。
 なお、この卓には香を焚くので強い匂いの花を挿けるのは避ける。もし匂いのある花を挿けるときには、香を焚くのを控える。また赤色の花も時には用いてもよいが、新宅に移る新宅席開きの時は、赤色の朱卓を用いてはならない。このときは焚き物をすることなく、強い香りのある白色の花を選んで挿けるものである。