14 飾り石
 広口や水盤などに飾り石をするとき、石が主位であれば花は客位にして挿け、石が客位であれば花は主位にして挿ける。このように石と花で陰陽和合とするものである。この主位と客位は、天石と天石に挿ける花でもって考える。なお、天石・地石・人石を用いたときには、各々の石に必ず花を挿けなければならない。ただし天地人の石以外を用いるときは、そこに必ず花を挿ける必要はなく、よって花を挿けずに、ただ石飾りとしてのみ用いても構わない。
 石と石との間は、「活の寸法」にしてバランスよく空けることが大切である。天地という陰陽二石、そして天地人の三石、またこれに陰石と陽石を加えた五石、さらに不動石と客珠石を加えた七石と、器の大きさや挿ける花に応じて石の数を決めるが、煩わしくないように石は少な目のほうがいい。大広口に石飾りをするときには、九石・十一石と使うこともある。なお、景色挿けにおいて、黒石と白石とでもって川をとる場合は、天石と人石の間を川上として、地石と陽石の間を川下として捉えるものである。また、一寸・六分・一寸・六分と小石の間隔を空けて、「天一地六」の割合で白の小石を配して、飛び石の景色を移し取ることもある。このとき黒の石は踏み返しの捨て石として用いる。
 この飾り石に用いる石については、以下に詳しく述べるものとする。先ず「天石」は天の位にして陽であり、万物を守護するという意味でもって「守護石」ともいう。この天石には山の肉をもった屹立した形の石を選んで用いるものである。次に「地石」は地の位にして陰であり、天石を拝することから「礼拝石」ともいう。この地石には平盤な形をもった石を選んで用いる。そして「人石」は、天と地の和合によって生じた和合石であり、人の位にして陰陽和合である。「人石」は天と地の下で安らかに住するという意味でもって「安居石」ともいう。この人石には、大きくも小さくもない中庸の、不立・不臥の姿をもつ石を選んで用いる。これは人の在るべき姿、そして天地和合の姿を現したものである。
 この天地人の三石に二石を加えて五石飾りとするとき、あとの二つの石は「陰石」と「陽石」である。この陰陽の二石は左右対称する石であり、日本という国土創造の二つの神で「二神石」ともいう。大小・高低、そして左右対称する姿をもつ石を陰石と陽石としてそれぞれ用いる。なお、水草のみを挿ける時に使う石として、水嵩が低い時には目に見えるが、水嵩が上がれば見えなくなるような石を水面ほどの高さにして用いるが、この陰陽の二石を「水おう石」ともいう。
 この五石に二石を加えて七石飾りとするとき、加える二つの石は「不動石」と「客珠石」である。「不動石」は不動として、天石である守護石の後ろ盾となる石である。また「客珠石」は人石である安居石と相対する石であり、安居石の客座として定まったものである。