3 花台 敷板
 花台は真・行・草の三種類のものがあり、それぞれ時候に応じて用いるものである。夏季には「草の花台」を使用し、花台の高さを低くすることで、花器の中の水がよく見えるようにする。また広口の花器の場合は、水面を広くする。いずれにしても夏は水を多く見せることで、涼しさを感じさせるようにするのである。そして、夏至より秋分までの九十日間は梅雨の時候であるので、花を挿けた後に、花器にも露を注ぐ。これは涼気を求めて、草木ともに露を楽しむ時候にあたるからである。
 また冬季には「真の花台」を使用し、花台の高さを高くすることで、花器の中の水を出来るだけ見せないようにする。広口の花器の場合、水面が多いと一層寒さを感じさせるので、つとめて水面を少なくするように心掛ける。春・秋の季節には「行の花台」を使用する。 
 この「真の花台」は高さが七寸二分のものであり、これは円を現す一年(三百六十)を、五気の五で割って割り出したものである。五気とは、(木・春、火・夏、金・秋、水・冬、土・土用)の五つの気のことをいう。また「行の花台」は高さが四寸八分のものであり、これは一日二四時間に、それぞれ陰陽を当てた四八刻を意味する。「草の花台」は三寸六分の高さをもつもので、これは一年(三百六十)という円を現すものである。
 花台を三つ床へ置くときは、中央には「真の花台」を、そして明り口には「行の花台」を、また床柱のほうには「草の花台」を置く。花も花台に合わせてそれぞれ真・行・草と挿け、そして花器も真(銅器・金)・行(土器・土)・草(竹器・木)と使うものである。この花台には、以上述べてきた長方形のもの以外に、木瓜形や松皮菱などのものがあり、さらにその花台の足も種々に風流なものがある。
 次に敷板(薄板)であるが、円の花器(陽)を置くには、角い敷板(陰)を使い、いっぽう角い花器(陰)を置くには丸の敷板(陽)を使う。これは、陰陽和合の未生の理念に基づくものである。ただし、横長花器などに用いる敷板としては特に決まりはない。また、この敷板にも正式には真・行・草の三種類のものがあり、敷板も花台のときと同様の扱いでもって、それぞれ時候に応じて用いるものである。この敷板の寸法としては、長さ陽の目九寸(地の数)、幅陰の目九寸(地の数)、厚さ陰の目二分八厘(天の二十八宿星)である。この敷板の縁面の取り方で、真・行・草の三通りに分けることができる。縁面を「一方落し」にしたものを真の薄板、そして「蛤落し」にしたものを行の薄板、また「矢筈落し」にしたものを草の薄板という。さらに以上の長方形の敷板の他に、四方を陰の目九寸とする正方形の角の敷板や、直径一尺の丸薄板、六角・八角の薄板、さらには木瓜形のものやミタレ縁のある薄板などがある。