6 七種竹花器
竹花器には基本となる七つの「七種竹花器」がある。「獅子口」「寸渡」「鮟鱇」「手杵」「二柱」「橋杭」「二重獅子口」の七種類である。
この基本の七種竹花器を同時に用いるときは、先ず「獅子口」を垂揆に掛けて明り口に用い、次に「寸渡」「鮟鱇」を順に置き、そして中央には「手杵」を、さらに続いて「二柱」「橋杭」を置き、最後に床柱のほうには「二重獅子口」を垂揆に掛けて用いるものである。明り口の方、すなわち巻頭には「獅子口」を、いっぽう逆の床柱の方、巻軸には「二重獅子口」を使うのである。このときの置花器は、常に行の花台を用いるものとする。花の挿け方としては、初め三瓶が客位の姿であれば、後の三瓶は主位の姿にする。そして中央は「手杵」を使い、明り口が右にくる「陽の床」であれば、上口には客位の立姿を、そして下口には主位の横姿にして挿けるものである。
七種竹花器は、以上の基本七曲(獅子口・寸渡・鮟鱇・手杵・二柱・橋杭・二重獅子口)以外に、変化曲の二種(旅枕・尺八・真鶴・寿老・雁門・九玉垣・二重雁門)、(登猿・一重切・河童・天蓋・二重櫓・大仏柱・三重獅子口)があり、合わせて基本二一種類となる。尚、竹花器を七種類同時に用いるときは、この三曲のうちであれば、それぞれどの花器を用いてもよいとされている。
花材としては、一種の花材で統一するのもいいし、それぞれ違う花材で組合わしてもよい。また、中央には山の木を、次に里の木を左右に、そして次に水草を左右にと挿ける場合などもある。さらに、花形という形においても特に決まりはなく、全ての花を「行」に挿けたり、また中央には「真」、次に「行」を左右に、そして次に「草」を左右にと挿ける場合などもある。また、七種竹花器に七曲を組合したりと、それぞれ自由に形を工夫して全体が調和するように挿けるものである。
以下に、基本となる「七種竹花器」の意味するところについて述べるものとする。
「獅子口」は師が口を開いて法を説く形である。法は尊いものであるが、人の教えによって始めて開かれるものである。その意味でも、人である師は万法開顕の基であるといえる。この「獅子口」の変化として「旅枕」「登猿」がある。
「寸渡」は竹花器の基本を成すもので、宇宙の本体をかたどったものである。寸渡の上半分は虚空、すなわち天円を現し、そして下の半分は風・火・水・地の四大を現している。この一尺余りの寸渡のなかに、広大な天地自然の姿が現されているのである。この「寸渡」の変化としては「尺八」「一重切」がある。
「鮟鱇」は口の大きい海の魚をかたどったものである。口の大きさは大海を意味し、そして広い度量を持ち、清いものも濁ったものも併せ飲む。この鮟鱇の忍耐強い心を現しているものである。この「鮟鱇」の変化としては「真鶴」「河童」がある。
「手杵」は上下同寸であり、よって陰陽等分・天円地方の和合を意味するものである。米をつく手杵は、物をこなすことから、物事をよくこなして理解する様をも現す。この「手杵」の変化としては「寿老」「天蓋」がある。
「二柱」は万物の源であるところの「いざなぎ」「いざなみ」という男女の神をかたどったものであり、よって陰陽和合を現すものである。この「二柱」の変化としては「雁門」「二重櫓」がある。
「橋杭」は人を渡し導く法の橋をかたどったものである。橋は道、そして杭は法を意味する。この「橋杭」の変化としては「九玉垣」「大仏柱」がある。
「二重獅子口」は師から学んだ法を、次の弟子に伝えていく、すなわち法の伝承者を意味するものである。また、伝統が受け継がれ、絶えることの無い様を現している。この「二重獅子口」の変化としては「二重雁門」「三重獅子口」がある。