8 五管筒
 三管筒が、未生という無形の真理を有形の花でもって現すものであるのに対して、五管筒は現実のものとしての天の現象や、また風景などを現したものである。この五管筒の置き方としては、「五行」「山水」「八重垣」「段杭」「稲妻」などがある。
 先ず「五行」の置き方は、万物の生成に作用する五つの元素(木・火・土・金・水)を五管筒で現したものである。この五つの元素である「五行」が様々に作用することで、天地にある全ての現象が生じていくのである。先ず、中央に最も高い@の筒を置く。次に、東西南北の四方を現すABCDの筒をそれぞれ置いて、最も高い中央の筒から四方の景色を眺望するような面持ちで挿ける。尚、最も高い@の筒を後ろに置いて、ABCDの筒をそれぞれ図のように置き合わせる置き方もある。いずれにしても、中央の筒の花は立ち姿として、この花は最も高く挿ける。そして東西南北の筒には、それぞれ中央の筒よりバランスよく取り合わせて挿けていくものである。主位の花が三つであれば、客位の花は二つに、また客位の花が三つであれば、主位の花は二つにする。このとき花全体で捉えると、前者は客位の花であり、いっぽう後者は主位の花となる。
 「山水」は、「山・里・水」という自然の景色を五管筒に移しとったものである。最も高い@の筒は遠景の景色を現す。そして次にAとBの筒は山の裾野にある里の風景として中景の景色を現す。またCとDの筒は近景として谷川などの景色を現すものである。花の挿け方としては、@の筒には山の木物を、そしてAとBの筒には里の草物を、またCとDの筒には川の水物を用いて挿けるのが基本である。しかし、山水という自然の景色の風情が感じとることができれば、このときの花材や花型は様々に応用しても構わない。
 「八重垣」の置き方は、庭の竹垣を五管筒として移しとったものである。@とAとBの筒は竹垣の外の景色を現す。いっぽうCとDの筒は竹垣の内、つまり庭の中の状景を現すものである。竹垣の外にある景色としては、Aの筒に高くそびえ立つ一本の立木を立姿にして挿ける。そして@の筒には、山々を横たわって連なる遠山の連峰を見立てて、横姿にして挿ける。Bの筒には山の立木と並んで立つ低い木々を現すのに、半立姿や横姿にして挿ける。そしてCとDの筒には、竹垣の内にある庭の状景を現すように、それぞれ草花や庭の池に咲く水物などを挿けるものである。
 「段杭」とは、川や池の岸などの石垣を築く時に、これを頑丈なものとするために、杭を何列かに打ち込んだものである。この杭は長い年月を経て風雨にさらされ、朽ちて不揃いになっていく。そのような水辺の趣ある風情を現したものである。花の挿け方としては、水辺の景色を現すために水草物を使って挿けるものである。 
 「稲妻」の置き方は、大空にきらめく稲妻の景色を移しとったものである。花の挿け方として、横姿の花は、直線的に横に長くして光の動きを強調して挿ける。
 以上、五管筒の置き方として「五行」「山水」「八重垣」「段杭」「稲妻」と説明したが、この置き方以外にも多様に変化させて置き合わせても構わない。